りきゅーの技術メモ

SFC18。東京に魂を売った関西人。コンピュータサイエンス、ドローン、お茶、弓道、哲学とか。スケボーかスノボー始めたい。

組織に東洋思想をインストールする

はじめに

 今回の記事は大学の授業で、組織戦略を変えうるものは何かという課題の回答として書きました。タイトルに東洋思想と入っていますが、簡単に要約すると、考え方の可能性を広げよう!というお話です。

組織戦略に東洋思想

 たとえば組織文化などの戦略において、組織や人に対して哲学や価値観を適用したり、広めようと企画することがある。この時、組織がどの様にあるのが良いか、人間はどういう性質を持っているかなど、戦略を考える上でベースにする思考体系や哲学的問いは、世界中の人類がこれまで築き上げてきた様々で膨大な思想や考え方の体系の中の一握りにすぎない。この局所解的状況から抜け出すことは戦略の可能性を広げる意味で大いに価値があるだろう。

東洋思想が受け入れられるために

 組織や社会、個人に東洋思想が応用されるためには、根本的な2つの命題が受け入れられなくてはならないと考える。
それは、

  1. 世界は無秩序で変化に富んでおり、確かな真理は存在せず、ただ世界への解釈が複数あるということ。
  2. 人間や社会に対する問いは原因論だけで説明することは難しく、目的論の立場も取れるということ。

の2つである。

原理的に解釈自由な世界

 私たちは日本人であるが、物事の考え方は西洋的な(特に近代西洋的な)考え方を多分に含んでいる。これは民主主義などの西洋で作られた近代的な社会制度を輸入していることからある程度必然的である。日本に限らず西洋的社会制度を輸入した他の国や地域も同様であろう。
 自然科学や社会科学は元を辿るとギリシア哲学から続く西洋哲学に行き着く。では、西洋的な思考体系はどの様な点で他の地域のものと区別できるのか。特に重要なことは主知主義であることだ。
 ニーチェによると、ソクラテス弁証法よって論理的に思考していけば必ず真理に辿り着けるとした。このソクラテスによるギリシア世界への主知主義の導入によって、西洋形而上学・近代科学の「真理」感が生まれたという。これは換言すると、世界を秩序立ったものとしてみようとする流れが生まれたということである。
 ニーチェは、この秩序を求める流れに対してディオニュソス的という言葉を挙げた。ディオニュソスとはギリシア神話に登場する酩酊の神で、秩序や形式化された世界に再び根源的な無秩序を取り戻すと言われる。こうして真理を「見つけ出す」という活動を否定し、解釈を「作る」だけだとしたことで、様々な解釈や考え方が許容される、「原理的に自由」な世界が説かれた。

原因論と目的論

 次に原因論と目的論だが、これもギリシア時代から存在した問題である。原因論とは自然科学の様に何かの要因によって何かが一意に引き起こされるといった具合の厳密性を持った因果関係で物事を捉える方法である。対して目的論は、人間のこうしたいという目的をベースに物事の捉え方を決定するということである。
 原因論的に物事を捉えると様々な解釈の可能性を自動的に狭めてしまうため、目的論の立場に立ち、目的を達成するための考え方を広く許容することで、東洋哲学の様に西洋的な思想によって忘れ去れかけている思想も「利用する」可能性が生まれるのではないか。

最後に

 東洋思想がどの様に戦略を変えるかについてはまだわからないが、上記で論じた様に、現代の物事の考え方の枠組みを出た別の考え方を取り入れることによって、戦略は大いに変貌しうるのではないかという可能性を提言する。

参考文献

  1. 丸山宏, 2019「高次元科学への誘い」https://japan.cnet.com/blog/maruyama/2019/05/01/entry_30022958/
  2. 岸見一郎, 1997「原因論と目的論-ギリシア哲学からの考察-」http://adler.cside.ne.jp/database/024/024_01_kishimi.pdf
  3. 竹田青嗣, 1994, ちくま新書ニーチェ入門」
  4. 竹田青嗣, 2002, 岩波ジュニア新書「哲学ってなんだ」